2015年8月アーカイブ

「このことば」は、連携プロデューサーが独断と偏見で、できれば、ああでもない、こうでもないと考え、学んでもらえるようなメッセージ性のあるものを取り上げています。かなり押し付けがましいことかと思いますが「このことば」を手がかりにことばの意味することについて多少とも知りたくなり、考えたくなる機会になればと考えています。


-1 第4次産業革命を意味する「インダストリー4.0」
           -ドイツが進める製造業の革新―

 ドイツの製造業がいま、劇的に変わろうとしている。いつどんな製品を、どうつくるかを工場自身が考え、生産や出荷を最適化する仕組みが生まれつつある。
  第1次は、18世紀、蒸気機関の発明による機械化、第2次は、20世紀初頭、電力の使用がもたらした大量生産、第3次は、20世紀後半、コンピューターによる生産自動化、そして第4次は、現在進行中のIOT(Internet of Tings)*による「考える工場」の実現である。名付けて「インダストリー4.0」、ドイツが官民挙げて製造業のスマート化に取り組んでいる。
  IOTを制する企業がものづくりを制する時代に入り3つの新しい変革が起こり始める。
    ① マスカスタマイーゼーション(個別大量生産)
      大量生産とほとんど変わらないコストでオーダーメイドの商品を提供
    ② 顧客から工場まで製造業全体の革新
    ③ ①と②の変化で主導権を握れるかどうかで、主従が劇的に逆転
  具体的にはIOTを核に、生産技術を社内外でつなぎ合わせ大量生産とほとんど変わらないコストでオーダーメイドの商品を作る。巨大なネットワークを活用し、新製品やサービス開発のためのデータの蓄積や分析で改良されるソフトの更新により、ハードを変えなくても「モノ」が進化する。顧客は、「デザインや機能は与えられるものを受け入れるだけ」という制約から、解放される。
  工場内の人や設備、製品だけでなく研究開発部門や調達先、顧客など、外部との幅広いネットワークの構築によって、人、製品、生産ラインが連携する工場で快適な環境をつくり、人の力を引き出しフル活用される。
  2014年9月に実施したドイツ200社の調査では、「インダストリー4.0」によって市場環境、自社のあり方、工場のあり方が変わり、中小企業にも意識が広がっている。

 *IOT:「モノ」のインターネットと呼ばれる。従来のIT(情報技術)機器だけでなく、自動車や家電、工場の生産設備などあらゆる「モノ」をインターネットでつなぎ、様々なデータを分析することで革新的なサービスや製品を生み出す。


3-2 インダストリアル・インターネット
      -「モノ」と「データ」が融合する21世紀の産業革命―

 インダストリアル・インターネットは、GEが進める「インダストリー4.0」の米国版といえる。機器に無数のセンサーを組み込み、顧客の現場での稼働状況をリアルタイムに監視、その膨大なデータを解析し、故障の予防や稼働率の向上につなげるのがインダストリアル・インターネットである。収集したデータは、開発プロセスにも反映され製品設計の最適化へ結びつける。
 ハードウェアとして機器を売るのが製造業の第1段階、製品の販売後も保守などで稼ぐサービス化が第2段階とすればインダストリアル・インターネットは、データ解析とソフトウェアの力で製品やサービスの顧客価値を飛躍的に高める。ソフトウェアを活用した機器の価値向上、生産技術の革新、開発の迅速化は、ものづくりを根底から変える取り組みである。
  一度は失った製造業の覇権を奪い返そうとしているのが米国である。様々な「モノ」をインターネットでつなぐ「モノ」のインターネット(IOT)のシステムを構成する技術を持つ巨大企業が力を合わせ、他の追随を許さない強者連合インダストリアル・インターネット・コンソーシアムを2014年3月に設立された。新しいものづくりのモデルケースを示し、関連製品やサービスの需要拡大を図る。
  IOTの機器間通信規格の標準化を目指して米国で乱立模様になっているコンソーシアムでインテルが主導する産業分野向け「オープン・インターコネクト・コンソーシアム」とクアルコムが主導する一般消費者向け「オールシーンアライアンス」が代表格でIOT普及へ各社の仲間作りが加速している。前者は、産業分野へのIOTの活用、後者は、家電など消費者との連携を軸にオフィスや工場、社会インフラへのIOTの展開を目指している。

参考文献
日経BPムック:まるわかりインダストリー4.0 第4次産業革命、日経ビジネス、2015.5.15

                                                                          (校友会連携プロデューサー 田中 久仁雄)

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